知的生産の技術研究会 関西
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出版事情;出版へのプロセス

講師:K2 久保岡 一徳氏(ペンネーム 河嶋 一徳)

日時:1994年5月26日(木) 大阪府立文化情報センター


略歴:1950年新潟生まれ。出版社勤務のかたわら、出版アドバイザーとして1957年より、自費出版を志す人のためのセミナー講師をつとめる。その数は100回を超える。また手がけた自費出版物は1000冊をこえ、多くの評価を得ている。自らも著者として、「エイズ予防の基礎知識」(NHK出版)「自費出版ハンドブック」(JDC)などの著書がある。株式会社日本デザインクリエーターズカンパニー、ライターズカンパニー所属

講演抄録

自費出版(作ることに意義がある)と商業出版(作ってからが大変)に差はない現在年間10万種類の単行本(雑誌除く)が出ている。そして平均50%近くが返品という状況である。

出版社は全国で3,500から4,000社あるといわれており東京に3,000社ぐらいあり第2位の関西には50社程度(名目上では200社くらいある)保育社、大阪書籍(ここは教科書がだめになった)など数社が東京に対応できている。全国に4,000社近くあるが上位300社で90%の売り上げをあげているのがこの業界大体出版社ですと手をあげたらOKのような業界でもある。

15年ぐらい前から即返(そくへん)棚にも並べないで返す、伝返(でんへん)伝票を見ただけで返す というひどい状況になっている。本があふれかえっているからで、こういうことをしない本屋は日本一の売り場を持つ梅田の紀伊国屋ぐらいしかない。出した本を並べてくれるのはここだけ。しかも注文を50冊単位で出してくれる。

無名の人の本を売るためには宣伝するしかない。宣伝で金をかけたら誰でもベストセラーになる。角川書店が初めて一冊の本を宣伝した。初版は出版社には利益無しで書店が15から20%のマージンである。ではどうすれば売れるかであるが、まずマスコミに取り上げてもらう手がある。当然取り上げやすい題材でないと駄目、「売らんかな」という本では駄目。新聞・ラジオ・テレビ全部タダで送る。これは取り上げられたら金のかからない宣伝になる。次は神棚に祈るしかない。

出版社の営業は書店回りをする。大体営業の仕事は本を置いてもらうしかない。一番いいのは平積み、次が棚入り(数冊棚に入る)そして1冊並べてもらい、倉庫、お蔵入りとなる。最大の返品で98%というのがあった。2%売れたかというと事故で無くなったりするのもあるのでそうでもない。まあ70ー80%の返品がごく普通である。

取次店が50社ありますが大手が6社あり、その中でも東販、日販、大阪屋の3つをおさえたらOKです。書店が約10万あり、取次にとって全国津々浦々配本するのは大変で特に少年雑誌がすごい、マガジンが3000万部出ている。人手がたよりなのでオーバーワークでこなしている。返品が多いので取次が売れる本だと思わないと扱ってくれない。

取次にきらわれる本は 値段が高い本(売れない、万引きされた時の被害が大きい)、変形本(ダンボールに入らない)、重い本

まず取次に行くと本を秤に乗せられてグラム単位ではかられる。奥付けの出版社を確認して取次に口座があるかどうか(取引しているかどうか)チエックする。OKになったら何月何日何時に搬入するということが決まる。取次は在庫などオーバーフローした状態なので時間指定までされて納品しないといけない。現在出版の初版部数が段々下がっている。それだけ売れなくなっている。藤本義一で3000部程度。

取次は今コンピューター配本を実施している。例えば経済書なら経済に強い本屋か経済書が欲しいといっている本屋にしか送らない。一切人情は無し。コンピューターに登録されているとおりに配本する。またこうしないとまわりきれない。著者、書名、出版社で本屋の棚に並ぶか決まる。例えば講談社なら並ぶ、集英社も並ぶ。弱小出版社は題名で並ぶかどうか。取次の心配は出版社がつぶれることで、返品先が無くなったら大変なので出版社は責任上続けないと駄目。

月1冊出していたのが月2冊となり3冊になったら取次は要注意してみている。これ危ないなと噂だけでつぶされた出版社が河出出版である。本当にひどい話で三省堂もそうである。一度つぶれたが現在再生しているが、出版社のおもしろいのはつぶれても再生できるところで他の業種ではまず無理。大体手をあげたら誰でも出版社のようなありさまですから何とでもなります。

これは東京のある出版社の実話ですが理工系の出版をやっていて1,000冊作ってボチボチ10年かかって売るようなことをしています。しかし売れません、そこで社員の一人にビニ本を作らせて売りまくります。そして逮捕されるとまあそう重い罪にはならないので社員を引き取って金が残っているのでまたいい本を出すというようなことをやっています。講談社も志ある出版社の一つですね、大体アルバイトが15年もいつくような家庭的な雰囲気があります。講談社でしか出ない本もあります。アルバイトが正社員にそのままなるような話もよく聞きます。反対に小学館ここはアルバイトはアルバイトとはっきりしています。

編集 編集者は編集段階で全部決めています。いい編集者は製作費まで全部分かっています。本を作るのなら企画と編集に力をかけるのがベストであとは印刷屋の作業となります。そしてグズグズやると段々悪くなります。やはり最初に思ったイメージが一番です。

校正 校正は著者校正が基本となります。著者が責任を負います。ただし活字となると正しく思ってしまうし、自分で書いたので先は分かっているし誤植とか見逃しがちです。そこで出版社では内部でも校正をやっています。しかし責任はとれないので著者校正が基本です。著者も周りの人に見せて確認してもらうのが一番いいでしょう。一校、再校、三校と3回やりここで校了とします。3回も見てると段々著者が文章を直したくなってきてろくなことはありません。

本を出すのであれば印刷行程などは勉強してどこに金がかかるのか把握しておくべきです、以外なところにお金がかかります。書籍はだいたい柳の下にどじょうは三匹います。一発当たると続、続々までいけます。いい本なのになんで売れないのかとおしゃる方がいますが、よいか悪いかは読者が決めるもので出す側が決めるものではない。売れればいい本である。口コミで広がるような本でないと駄目。

国会図書館法  出版したら通知する義務がある。半額は金を出して買ってもらえるが書類など面倒なので通常は献本となる。図書館などは国会図書館週報を買っていてこれで選んだりしているので国会図書館に収めると宣伝にはなる。国会議員になればフリーパスで全部借りだしができる。


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