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昨年の夏、社団法人日本ローマ字会と合同で「知的生産の技術」発刊30周年記念・梅棹先生を囲んで語り合う会を開催いたしました。(1999.7.10千里ライフサイエンスセンターにて)今回はその第2回目です。
今回も梅棹忠夫特別顧問を囲んで語り合う会です。今回のテーマは「表音文字と表意文字」についてですが、いつものように質問によってはテーマからどんどんずれていくと思いますので、ぜひお聞きしたい質問を考えてご参加ください。
カタカナ、ひらがな、ハングル、ロシアのキリル文字、ギリシャ文字等古代ローマの文字を使ったローマ字も表音表音文字、日本には50音がある。こちらが世界の趨勢エジプトのヒエログラフも表音文字である。
表意文字1字1字が一つの意味を持つ特殊な言語 意味の数分の文字が必要になる。中国では周期表の各元素には一つ一つの漢字が割り当てられている。そのために漢字では意味の数分の文字が必要となり、何万という漢字になる。この表意文字は他には雲南省で使われているモノ文字西夏文字ぐらいしかない
日本語はアルタイ語と深い関係にある。昔はウラル・アルタイ語と言ったが、ウラル語はスオミ族が使っているフィンランド語たラップ族のエストニア、ハンガリーで使われている言語で、全然関係は無い。アルタイ語を使用しているのはトルコのチュルク語、モンゴル語、満州語、朝鮮語、そして日本語である。モンゴル語の文法は日本語と同じ語順になっている場合が多く、単語を置き換えて、日本語の語順で言えば通じる。
ぐるっと中国を取り囲んでアルタイ語族が並ぶ形にある。中国語の体型は日本語の体型と全然違う。同じ音の漢字があるが四声で全部、区別している。広東語にはこの声調が9つもある。日本にも「はし」のような例もあるが、基本的に声調はない。反対に日本語には五段活用があるが、中国語には無い。中国語とよくにているのはタイ語で声調が5つある。チベットもそうで、つまり中国・チベット・タイをアルタイ語族が取り囲んでいるような言語分布である。
問題は中国が四大文明の一つの強国であったことである。日本は7世紀から9世紀にかけて、漢字を取り入れたが、日本語は50音だけなので正確な中国語ではなく、なまった音を導入した。これが「音読み」である。また意味を表す「訓読み」の2つの読み方を併用した。漢字を借用した国の中で、こんなことをしたのは日本だけ。ベトナムも韓国でも読みは一つだけである。これが1000年間しんどいことになった国民的悲劇である。国語を学習するのに必要な時間が10倍にはねあがった。自分たちの言語を学ぶのに数年間を要するとは、信じられない事態となっている。
日本は大国中国の隣に位置したが故に、本質的に構造の異なる漢字を導入し、とんでもない運命にひきずりこまれた。その結果、1000年間にわたって苦しんできた。それは今も続いているし、このままでは致命的な事態がやってくる。隣の韓国はチベットから伝わったモンゴル(元)のパスパ文字を使って、ハングルを14世紀、15世紀頃に成立させた。これは参考になる事例である。
日本には情報の蓄積はある。しかし現在の日本語のままでは、必要な情報がタイムリーに引き出せない。自国語が読めますか。書けますか? 一応できても、少し突っ込むとすぐばれる。正確に読めるとは何かさえ、わからなくなってくる。梅棹忠夫全集の索引を作るのに1年もかかった。欧米なら一瞬で出来あがってしまう索引が日本では作れない。単語の読み方がわからない。固有名刺はほとんど読めない。本人しかわからないような名前は、他の国にはない。たいてい音で読んでごまかしている。アメリカでは索引のないような本は、読む価値もないとされる。日本では学術書にさえ索引のないものが多い。
日本の文明を維持していくのに、この言語体系では21世紀が乗り切れない。わが国の文明はきわめていいかげんである。もっと表音化させていかないといけない。盲人となってラジオのニュースを聞いているがおかしなことが多い。実際に同じカガクだが、科学と化学の区別はつかない。そこで会話では「バケガク」と言っているが、そういうことをやっていけば表音化が進むのでは 中国では四声があるので、同音異義は発生しないが、日本では同音異義ばかりである。
Q&Aでも色々な話題が出てましたが、大阪市のオリンピック招致委員会がOSAKAとやっているが、あれで本当にいいの?という話がありました。そのまま発音すれば「おさか」で「おおさか」なら、やはり「OOSAKA」だろうと、ですが昔は本当に「おさか」と言っていた時代があるそうです。
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