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日本の社会や経済のしくみが大きく変ろうとしている今、私たちの抱いている仕事についての価値観も揺らいでいます。講師の甲南大学経済学部教授の杉村芳美先生は、1993年4月より「OWL(Original Working Life)仕事研究会」の世話人をされ、現代社会における「個人の働き方」「企業・組織のあり方」「教育の問題」などについて、ざっくばらんな雰囲気の中で討議してこられました。その成果の一端として、昨年『「良い仕事」の思想』(中公新書)を出版されております。
今回のセミナーでは、前半の45分程度で杉村先生より「良い仕事」とは何かについて問題提起をして頂きます。残りの時間は、出席者の参加により各々の「良い仕事観」について自由に意見交換をして頂きます。杉村先生の問題提起に対して議論が広がり、自分の仕事観について各々が考えを深めていくきっかけになればと思います。最後に杉村先生に今回の意見交換を踏まえて、総括をして頂きます。ぜひ事前に『「良い仕事」の思想』をご一読下さい。
略 歴:甲南大学経済学部教授、OWL仕事研究会世話人 1948年京都生れ。東京大学経済学部卒業 同大学院博士課程修了。
著 書:『脱近代の労働観―人間にとって労働とは何か』(90年ミネルヴァ書房)、『「良い仕事」の思想―新しい仕事倫理のために』(97年中公新書)、訳書 K.ポラニー『大転換』(共訳:75年東洋経済)
〜「良い仕事」の10ヶ条〜
杉村芳美著『「良い仕事」の思想』(中公新書)より
1.良い仕事は、仕事を意味あるものと見なすことを前提にする。
2.良い仕事は、仕事に対する真剣で責任感ある態度を求める。
3.良い仕事は、生活の必要を充たす。他者に負担をかけないし、働けない者を助けることができる。
4.良い仕事は、共同生活に貢献する。他者への献身や共同社会への貢献など、全体を豊かにする仕事である。
5.良い仕事は、善い生き方と重なる。
6.良い仕事は、平衡のとれた生活とともにある。仕事と余暇、仕事と家庭、個人と社会など、仕事と他の領域との間の平衡に配慮を欠いた仕事は、良い仕事ではあり得ない
7.良い仕事は、魅力的である。仕事そのもののおもしろさや楽しさは仕事にとって望ましい。
8.良い仕事は、個人を成長させる。良い仕事は、各自に与えられた能力を生かすとともに、他者との交流を通して、個人の成長をうながす。
9.良い仕事は、個人を超える価値につながる。仕事は個人の欲求充足にとどまるのでなく、共同的な価値さらには普遍的な価値と結びつく。
10.良い仕事は、求めて初めて得られるものである。良い仕事はあらかじめ個人に対して用意されているものではない。特定の職業がそのまま良い仕事なのではない。良い仕事は、何がそれであるか自ら考えかつ求めて初めて得られる。
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